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新株発行をめぐる紛争

株式会社が法令もしくは定款に違反しまたは著しく不公正な方法により新株の発行を行おうとし、これによって株主が不利益を受けるおそれがある場合には、その株主は会社に対してその新株発行の差止めを請求することができます。

なお、会社法では、新株発行と自己株式の処分規律を一体化し、両者併せて募集株式の発行等として各種の規定が定められており、差止請求についても募集株式の発行等の差止めとして規定されています(会社法210条)。

平成13年改正商法により、誰に対しても新株予約権(会社法2条21号)を付与することが認められたことから、資金の乏しいベンチャー企業が現金支出に代えて取引先に発行するなどが可能になったほか、いわゆる敵対的企業買収に対する平時導入型防衛策の主要方法の一つになり、会社法247条に基づき新株予約権の発行差止めを求める事案も増加しています。

瑕疵のある新株発行等の対策として、①効力発生前の差止め、②効力発生後の無効、③関係者の民事責任があります。

新株発行等の差止め

会社が法令・定款に違反する株式の発行・自己株式の処分、または、著しく不公正な方法による株式の発行・自己株式の処分を行い、これによって株主が不利益を受けるおそれがある場合には、株主は、その効力発生前に、会社に対しその株式の発行・自己株式の処分の差止めを請求することができます(会社法210条)。

このうち、著しく不公正な方法による発行等とは、不当な目的を達成する手段として発行等が利用される場合のことを言います。具体的には、取締役が議決権の過半数を維持・争奪する目的または反対派の少数株主権を排斥する目的のため新株の発行等を行う場合がこれに当たります。

新株発行等の効力が生じてしまいますと差止めはできなくなりますので、その効力発生前に、株主は、会社を債務者として、差止請求権を被保全権利とする新株発行等の差止仮処分の申請を行うのが通常です。

新株発行等の無効の訴え

新株発行等に法的瑕疵がある場合につき、無効の一般原則によったのでは法的安定性に欠けますので、新株発行の無効の訴え(会社法828条1項2号、2項2号、834条2号、839条、840条)、自己株式の処分の無効の訴え(828条1項3号、2項3号、834条3号、839条、841条)による形成判決によることになります。

関係者の民事責任

その他、関係者の民事責任を追及する方法もあります。