民事訴訟は、公開の法廷で行いますので、誰でも傍聴することができます。しかし、傍聴しても、事件の中身が分からないと法廷で何をやっているのか理解しにくいです。そこで事件の中身を知る方法として、民事訴訟法では、91条で、裁判所の書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができると定めています。訴訟記録の閲覧は、訴訟記録の保存や裁判所の執務に支障がない限り、原則認められます。
1 訴訟記録の閲覧制限の申立
しかし、民事訴訟の内容によっては、訴訟記録を閲覧されることによって重大な不利益を被ることがありえます。そこで、民事訴訟法92条では、当事者の申立により、訴訟記録の一部をマスキングする等をして閲覧制限を裁判所の決定により例外的に認めています。当事者の申立が認められ、裁判所の決定が出た場合、第三者が閲覧をしようと思っても、マスキングされた訴訟記録が開示されることになります。当該第三者は、不満であれば、閲覧制限の要件を満たさないとして裁判所の決定の取消しの申立をすることができます。
2 閲覧制限の要件
民事訴訟法92条1号か2号のどれかに該当することを疎明する必要があります。
①1号事由
訴訟記録中に当事者の私生活について重大な秘密が記載される等であって、第三者が閲覧することで、当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生じさせる恐れのあること
②2号事由
訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密が記載等されていること
3 申立の方法
「甲第何号証乃至第何号証における氏名等」のように、訴訟記録自体も特定し、閲覧制限をかける部分も特定する方法で申立てたり、「氏名、住所、職業の閲覧の制限を申立てる」のように、閲覧制限をかける部分だけ特定して申立てる方法をすることもあります。
B肝炎訴訟などは、一般に人に知られたくないことですから、閲覧制限をかけるのが通常で、裁判所が出す書類も閲覧部分をかける必要がありますから、訴訟記録は特定せずに、閲覧制限をかける部分だけ申立てる方法をとります。
閲覧制限の決定が出たら、マスキングしたものを裁判所に提出すれば、第三者に自分に知られたくないことを閲覧されることはありません。(弁護士中村友彦)