割増賃金の計算ソフト「きょうとソフト」

 残業代などの割増賃金をめぐって会社と従業員の方との間で争いになることがあります。

 当事務所でも、過去において取り扱ってきましたが、一番大変なのが割増賃金の計算です。割増賃金請求権の消滅時効は2年ですから、具体的な案件では、過去2年分の割増賃金が対象となり、タイムカード等により毎日の勤務時間を確定する必要があります。

 そのうえで、基礎賃金、所定労働時間、始業時刻、終業時刻、休憩時間、法内残業、法外残業、休日労働、深夜早朝労働などを勤務日毎に計算し、集計していくという作業を行うことになります。

 しかも、相手方が異なる計算ソフトを使用している場合、どこがどのように違うのかを理解することすら困難という状況になってしまいます。

 そうしたところ、「きょうとソフト」検討製作メンバー(京都地方裁判所第6民事部に配属された裁判官と京都弁護士会のグループ)が、割増賃金計算ソフト「きょうとソフト」を製作し、公表されました。これは、原告、被告及び裁判所のための複数のシートを備え、三者での共有を念頭において作成されたソフトとのことであり、詳細は判例タイムズ1436号で解説されています。

 既に日本弁護士連合会の弁護士会員向けホームページからダウンロード可能となっており、弁護士、裁判官以外の方は、具体的事件を通じて弁護士に依頼し又は裁判所から提供を受けることを想定しているとのことです。

 割増賃金の計算でお困りの方は上記ソフトの利用をご検討いただければと思います。

(弁護士 井上元)