第1 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法
幼少期に受けた集団予防接種等の際に、注射器が連続使用されたことでB型肝炎ウイルスに持続感染した人達を救済するために、訴訟を提起し裁判上の和解等が成立した場合に給付金を支給する制度を定めたのが、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法です。
1 給付金
(1)金額
病態によって給付金の額がかわります。具体的な額は、以下の通りです。
病態等 |
金額 |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) |
3,600万円 |
肝硬変(軽度) |
2,500万円 |
慢性B型肝炎 |
1,250万円 |
20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎の方で、現在も慢性肝炎の状態にある方等 |
300万円 |
20年の除斥期間が経過した慢性B肝炎の方で、現在は治癒している方 |
150万円 |
無症候性キャリア |
600万円 |
20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア |
50万円 |
訴訟手当金として、上記給付金額の4%が弁護士費用の一部として支給されます。また、上記以外にも支給される給付金はあります。
*無症候性キャリアとは
B型肝炎ウイルスに感染しているけれど、症状が出ていない人のことです。
(2)支給を受けるための要件
厚生労働省発行の『B型肝炎訴訟の手引き』に詳しく記載されておりますが、要件①から⑤の5つをみたす必要があります。
① B型肝炎ウイルスに持続感染していること
② 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること
③ 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
④ 母子感染でないこと
⑤ その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
2 支給を受けるための手続きの流れ
B型肝炎ウイルスの感染は様々な原因が考えられますから、司法手続きの中で、支給を受ける要件を満たすか確認のうえ、和解等が成立してから、社会保険診療報酬支払基金へ給付金を請求します。
医療記録等の収集・訴訟の準備
↓
国家賠償請求訴訟を提起
↓
訴訟記録の閲覧制限の申立(希望者のみ)
↓
期日間に法務局と必要書類の提出等のやりとり
↓
和解協議手続・和解成立(和解調書の作成)
↓
社会保険診療報酬支払基金へ支給請求
↓
社会保険診療報酬支払基金から支給
3 除斥期間に注意
B型肝炎訴訟は、国による不法行為の責任を問うものですが、B型肝炎の給付金は、時効期間(3年)を問題にしません。そのかわり、除斥期間20年を経ているかどうかで、給付金の額を大きく変更することになっています。例えば、慢性B型肝炎の場合、発症から20年を経過していなければ1250万円の支給に対し、経過していれば、300万円か150万円にとどまります。したがって、除斥期間が迫っている人の場合、早急に手続きを進めないと給付金が大幅に減額されることになります。
4 費用について
検査費用など一部については支給されるものもあります。また、訴訟を提起する必要がありますが、弁護士に依頼した場合、国から4%が弁護士費用の一部として支給されます。
5 肝炎ウイルス検査について
B型肝炎ウイルスは、本人の自覚なしに感染していることがあります。集団予防接種を幼少期に受け、その際、注射器の連続使用があったことなどを知らない人は多いと思います。B型肝炎ウイルス検査は、近くの保健所や医療機関で無料または低額で受けることができますので、過去にB型肝炎ウイルス検査をしたことがない人は一度受けてみてもいいでしょう。(弁護士中村友彦)