令和元年12月4日、会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)が成立しました(同月11日公布)。
法務省民事局が概要を公表していますので、ご確認ください。
改正の概要
第1 株主総会に関する規律の見直し
⑴ 株主総会資料の電子提供制度の創設
現行法上は、インターネット等を用いて株主総会資料を株主に提供するためには、株主の個別の承諾が必要。
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株主総会資料をウェブサイトに掲載し、株主に対してそのアドレス等を書面で通知する方法により、 株主総会資料を株主に提供することができる制度を新たに設ける。ただし、書面での資料提供を希望する株主は、書面の交付を請求することができる。
⑵ 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
近年、一人の株主が膨大な数の議案を提案するなど、株主提案権の濫用的な行使事例が発生し、権利の濫用と認められた裁判例もある。
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株主が提案することができる議案の数を10までとする上限を新たに設ける。
第2 取締役等に関する規律の見直し
⑴ 取締役の報酬に関する規律の見直し
取締役の個人別の報酬の内容は、取締役会又は代表取締役が決定していることが多い。報酬は、取締役に 適切な職務執行のインセンティブを付与する手段となり得るものであり、これを適切に機能させ、その手続を透 明化する必要がある。
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① 上場会社等において、取締役の個人別の報酬の内容が株主総会で決定されない場合には、取 締役会は、その決定方針を定め、その概要等を開示しなければならないものとする。
② 取締役の報酬として株式等を付与する場合の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限等を 加える。
③上場会社が取締役の報酬として株式を発行する場合には、出資の履行を要しないものとする。
④ 事業報告による情報開示を充実させる。
⑵ 会社補償に関する規律の整備
役員等の責任を追及する訴えが提起された場合等に、株式会社が費用や賠償金を補償すること(会社補償)については、利益相反性があるが、現行法上は、会社補償について直接に定めた規律はない。
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株式会社が会社補償をするために必要な手続規定や会社補償をすることができる費用等の範 囲に関する規定を新たに設ける。
⑶ 役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備
株式会社が役員等を被保険者とする会社役員賠償責任保険(D&O保険)に加入することについては、利益相反性があり得るが、現行法上は、D&O保険への加入について直接に定めた規律はない。
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株式会社が役員等を被保険者とする会社役員賠償責任保険(D&O保険)に加入するために必要な手続規定等を新たに設ける。
⑷ 業務執行の社外取締役への委託
現行法上、業務を執行した場合には社外性を失うとされていることにより、社外取締役が期待されている行為をすることが妨げられることがないようにする必要性が指摘されている。
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株式会社と取締役との利益相反状況がある場合等において取締役会が社外取締役に委託した業務については、社外取締役がこれを執行したとしても、社外性を失わないものとする。
⑸ 社外取締役を置くことの義務付け
現行法上、上場会社等が社外取締役を置かない場合は、株主総会で理由を説明しなければならない。東証上場会社の98.4%(市場第一部においては99.9%)は社外取締役を置いている。
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上場会社等は、社外取締役を置かなければならないも のとする。
第3 社債の管理等に関する規律の見直し
⑴ 社債の管理に関する規律の見直し
社債の管理については、現行法上、社債管理者の制度があるが、権限が広く、責任が重いことを原因として、なり手の確保が難しく、利用コストも高くなると指摘されている。
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社債権者において自ら社債を管理することができる場合(注)を対象として、社債管理 補助者に社債の管理の補助を委託することができる制度を新たに設ける。
(注)各社債の金額が1億円以上である場合等
⑵ 株式交付制度の創設
現行法上、自社の株式を対価として他の会社を子会社とする手段として株式交換の制度があるが、完全子会社とする場合でなければ利用することができない。他方、自社の新株発行等と他の会社の株式の現物出資という構成をとる場合には、手続が複雑でコストが掛かるという指摘がされている。
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完全子会社とすることを予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするため、自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる制度を新たに設ける。
第4 その他
① 社債権者集会の決議による元利金の減免に関する規定の明確化
② 議決権行使書面の閲覧謄写請求の拒絶事由の明文化
③ 会社の支店の所在地における登記の廃止
④ 成年被後見人等についての取締役の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備
施行日
公布の日から1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行
ただし、株主総会資料の電子提供制度の創設及び会社の支店の所在地における登記の廃止については、公布の日から3年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行
(弁護士 井上元)